kubonoのブログ

呼吸するようにふざけるため、ふざけてるのか呼吸してるのか時々分からなくなります。

【掌編】俺の嫁とエイリアン

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※画像はWikipediaより引用 https://ja.wikipedia.org/wiki/エイリアン_(映画)

 

 

エイリアンという映画をご存じだろうか。

リドリー・スコット監督によって1979年に発表されて以降、今もなお続編やスピンオフが出るほどの強固な人気を誇る超有名作品である。

作中で登場するエイリアン(異星人)のビジュアルがとにかく強烈で、発表当時、一度見たら決して忘れられないその姿は、世界中の子供たちにトラウマを刻みつけたことでもお馴染みだ。

 

 

俺の嫁はエイリアンに似ている。

食卓に座って、コーヒー片手に物憂げに何かを考えているときなんかは、特に似ている。

だが、俺はそんな嫁を見て可愛いと思う。世界で一番可愛いと思う。

それはつまり、エイリアンを見て世界一可愛いと思うのと同じことだが、そんなことはどうでも良い。

俺にとっては俺の嫁が何よりも一番なのだから。

  

ある日、仕事から帰ってきた嫁が悲しげな表情をしていた。

「なにかあった?」と尋ねても、「別に」としか答えてくれない。

女性の言う「別に」が、本当に「別に」という意味だけをはらむわけがないので、俺は嫁に何度も、それも結構しつこいくらいに理由を尋ねた。

さすがに10回目くらいの「なにがあったの?」で嫁は折れたようで、渋々理由を話してくれた。

「今日、会社の同僚と話してたんだけど」

「うん」

「今度、うちの部署で結婚する人が出て、その人が、『結婚相手はこの人ですー』って、みんなに写真を見せてたの」

「うん」

「みんなその写真を見て、『イケメンだねいいね』なんて言ったりして、そしたらなぜか私の夫の写真を見せる流れになっちゃって」

「うん」

「本当は嫌だったんだけど、見せないとその場も白けるし、仕方なくあなたの写真を見せたの、そしたら……」

嫁はそこで口を噤んでしまった。

聞かなくても分かる。きっと同僚からはこう言われたのだろう、「旦那さんはこんなにイケメンなのに、あなたってエイリアンみたいな顔してるのね」と。

確かに事実かもしれないが、それを彼女に直接言ったところでどうなる?

彼女を悲しませたところで、その同僚は一体何が得られるってんだ?

俺は腹の奥底からフツフツと怒りが湧きあがるのを感じた。

覚悟を決め、

「そんな会社もう辞めていいよ。これからは俺が一人で頑張って稼ぐから」

と言いかけたその時、

嫁が再び口を開いたのだった。

「…そしたら、『あなたの旦那さんってプレデターにそっくりね』って言われたの…私、悲しくて。確かにあなたは元々プレデターに似てるけど、でも、そんなこと関係ないくらい私はあなたのことが好きなのに。美女と野獣のカップルだってことはもちろん分かってたつもりだけど、そんなこと、わざわざ口に出して言わなくても良いじゃない。ねえ、そう思うでしょう?」

俺は、決めた覚悟をすぐに捨てた。その場で捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

※この記事はフィクションです。実在の作品、人物、団体などとは一切関係ありません。